ホスピタリティのこと

2020年4月 8日 (水)

ポケットに手を入れる

 ずいぶん前に経営関係の講演で聞いた話です。

 ある車のディーラーで販売が伸び悩んでいて、その原因をつかみかねているところがありました。

 そこの社長は、一度外部の専門家に見てもらったほうがよいと判断し、経営診断を受けてみたようです。

 その結果、顧客ニーズにそった車種が取り揃えられていて、広告も打っているし、従業員の顧客対応も丁寧で、特に問題がない。ところが、1点だけ非常に気にかかることとして、指摘がありました。

 それは、社長が店にいるときに、寒くもないのにポケットに手を突っ込んだまま、客を案内していたということ。客の目からすれば、社長の態度が横柄に見えたのでしょう。

 同じような話が、プロ野球の外国人選手が監督に批判的な行動をしたために登録抹消となり、それを謝るために監督のところへ赴いた際にもあったようです。謝りに来たのに、ポケットに手を突っ込んでいたので、再び監督を怒らせたと報道されていました。

 このように、ポケットに手を入れたまま、あるいは腕を組んだまま行動するのは、たとえ無意識ではあったとしても、相手に不快な感情を起こさせるので、特に客商売の場合、慎まなければならないという教訓です。もちろん、これが売上不振やトラブルの原因のすべてということではないと思いますが、重要な要素ではあったのでしょう。

 先に書いた社長の場合は、その癖を完全に直すために、上着やズボンのポケットを全て手が入らないように縫ってしまったらしいです。深く反省して即行動に移したのは大したものだなと感心しました。

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【↑出典:「いらすとや」さん】

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2017年5月 5日 (金)

座って接客するレジ担当者

 先日(2017.5.3)の日経新聞の私見卓見というコーナーで、スイス在住の中園直子さんという主婦の方が「レジ係は座って接客しよう」という提案をされていました。

 

 その要点は、無駄なストレスを取り除く視点で 職場や社会のあり方を徹底的に見直すべきとの考えのもと、まずはスーパーのレジ係は立つのをやめようということです。

 

 スイスでは どのスーパーでもレジ係は座っていて、日本でも座ることにすれば それで得た心身の余裕をにこやかな接客に向けられるはずと主張されています。

 

 私はレジ担当の方が立っているのに何の疑問もなく、自然なことと捉えていたのですが、よく考えてみると、窓口を担当する方で立ったまま応対するケースはむしろ少ないのではないかと気づきました。今まで当然と思っていたことも常に見直しをすることが必要なのでしょう。

 

 このご意見を読んで、私が思い出したのは「涙の数だけ大きくなれる!(木下 晴弘著)」という書籍で紹介されている「レジ打ちの女性」の物語です。既に聞かれた方も多いと思いますが、途中までのあらすじは、

 

「どんな職場に転職しても仕事が続かない女性が、レジ打ちの仕事を紹介され、しばらくは続けていたのだが、単純作業に嫌気がさし、また彼女の母親からの家へ帰ってきたらという誘いもあって、一旦はその仕事を辞めることを決断した。

 

ところが、そのとき、たまたま この女性は子どもの頃の日記を見つけ、ピアニストになりたかったという夢を思い出した。これをきっかけとして、ピアノのようにキーを見ないでレジを打つ練習を始め、マスターすることになった。そうすると、お客さんの様々な様子が見えるようになってきた。

 

そして、あるとき・・・。」

 

というようなものですが、全編は次のリンク先をご覧いただければと思います。

 

あるレジ打ち女性の話

 

 いまどきキーボードのようなレジなんてありませんし、現状において既にセルフレジの導入が相当進んでいる中で、今後さらにAIに代替されていく仕事かもしれません。

 

 しかし、個々のお客さんに応じたフェイス・トゥ・フェイスのきめ細かな応対は、AIによる代替が当面困難と思われるので、ここに人が仕事をする意義が残ると考えられます。

 

 このように、お客さんへの気遣いが大切という意味で、レジ打ちの女性がキー操作を熟達することでお客さんの様子をうかがえたように、座って接客することで余裕をもち自然に挨拶を交わせる関係をつくることは かなり重要なのだろうと感じました。

 

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2012年8月 2日 (木)

ショッキングな記事

 昨日(201281日)の中日新聞地域版「波の詩」というコラムに、伊賀市にとって大変残念なことが掲載されていました。

 

 「五百円」というタイトルが目をひいたので読んでみたところ、伊賀市内の駐車場(市営なのか民間なのかはわかりません)での応対が非常に悪いという指摘でした。

 

具体的には、

「「五百円」伊賀市中心部の有料駐車場に車を止めた時、管理人の男性が開口一番に発した言葉だ。悪気はなかったと信じたいが、あまりにも人間味のない無愛想な対応にがっかりした」

「市内の観光施設駐車場で満車時、誘導員に「シッ、シッ」のジェスチャーで追い返されたこともある」

ということです。

 

 駐車場は、観光客の方が伊賀市へ来て最初に言葉をかわすところかもしれません。そういうところで、愛想のかけらもない、こんなひどい応対をしているとなれば、観光地失格と言われてもしかたのないことでしょう。

 

 全ての駐車場がこんなことではないと思いますが、たとえ1か所でもそういうのがあると、伊賀市全体のイメージダウンになってしまうので、ぜひ改善してほしいものです。

 

伊賀市役所の観光課か伊賀上野観光協会が、市内の駐車場を対象にどんな応対をしているのか覆面調査を行って、結果を公表するといったことも考えてよいのではないでしょうか。

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2010年8月13日 (金)

書籍「ホスピタリティ」

 以前のブログにも書いたことですが、この「ホスピタリティ サービスの原点(力石寛夫著)」という本は、サービス業に従事する方には、必読のものと思います。(ホスピタリティhospitalityとは、心のこもったもてなしのことで、病院hospitalも語源は同じらしいです。)

 

【書籍「ホスピタリティ」】

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 とても読みやすくて、わかりやすい。あっという間に読めてしまいますが、内容は非常に充実しています。

 

 たとえば、著者がアメリカのホテル・レストラン経営系大学の実習で経験したこととして、

 「レストランでウエイターが水の注ぎ足しをするとき、動作、形は完璧でも”どうぞおいしい水をお召し上がりください”という気持ちがこもっていなければ、寂しいものになってしまう。サービスという仕事は、心、気持ちを込めてやることが大切だ」

といったことが、丁寧に書かれています。

 

 私がかつて宿泊した新潟の あるホテルでは、新入社員の必読書として感想文の提出を求めていると聞きました。

 

 対人関係の仕事をされる方に、ぜひおススメしたい書籍です。

 また、この本には

続ホスピタリティ」という続編があります。

 ここで特に強調されているのは、「お客さまが上で働く人が下という捉え方は誤りで、横の関係であることが大切である。サービス業に従事する人たちは、お客さまへサービスすることが自分自身の喜びと感じられなければならない。サービス業の原点は、サービスする側がお客さまと喜びや楽しさ、感動を共有することにあるから。」ということです。

 

 このあたりは、ザ・リッツ・カールトン ホテルのゴールドスタンダードに記載されているWe are Ladies and Gentlemen serving Ladies and Gentlemen(紳士・淑女をもてなす私達従業員もまた紳士・淑女である)に通じるものがありますね。

 

 日本では、よく「お客さまは神様」と言われますが、そうではなくて、お客と従業員が同じ立場で一緒になって満足度を高めていくことが理想的なのでしょう。お客の側もあまりわがままばかり言わず、節度をもってサービスを受けることが大事なのだろうと思います。

 

【書籍「続ホスピタリティ」】

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2010年7月31日 (土)

感動の物語

 かつてディズニーランドにまつわる心温まる話をお聞きして感動を覚えたものですが、次の「日本橋高島屋」のエピソードは実話であるだけに、特に胸を打つものがありましたので、紹介したいと思います。


「1粒のブドウの心」 白血病少女に一口と規則破って店員バラ売り -高島屋指針に
   (毎日新聞 大阪夕刊 1991年3月23日)

 命短いわが子を思う親心と店員の思いやりが、約二万六千人のグループ社員の行動指針として、時を超えて生き続けることになった。この百貨店は高島屋(本社・大阪市)。ブドウの父娘は千葉県市川市、会社員、伊藤博さん(34才)と長女かほりちゃんで、かほりちゃんは1987年12月、白血病で東京都中央区の聖路加国際病院に入院。入退院を繰り返しながら1989年5月17日、5歳6カ月の生涯を終えた。

 亡くなる1カ月前のこと、入院中のかほりちゃんが好物のブドウを欲しがった。季節はずれだから、近くの八百屋さんでは売っていない。「日本橋(東京)の高島屋まで行ったら、桐の箱に入った巨峰で、何万円もするんです。娘は食べても5、6粒。あきらめようと思いましたが、一応、わけを話してみたら売り場の人が親切な方で-」 店では、箱のものはバラ売りしないという取り決めがあった。しかし、伊藤さんの話を聞いた女性店員は20粒ほどを量って、二千円で売ってくれた。

 感激した伊藤さんは、この話を主治医の細谷亮太さん(43才)に話した。たまたま細谷さんは当時、毎日新聞家庭面(東京本社発行版)で「パパの歳児記」と題した週1回のコラムを担当しており、同年5月4日付のコラムに「苦痛を軽くして良い時間をのばしてあげる方針で、彼女も家族も私たちもがんばっています。(中略)。気がついておられないかもしれませんが、私たちに神様と同じくらいの力を貸してくれたフルーツ売り場の人に、心からお礼を言いたいなと思います」と書いた。

 一方、高島屋は昨年から創業百六十周年を機に、新たに企業行動の指針としての経営理念を策定することにし、この話が話題になった。日高啓社長は「理念とはもっと一般化すべきものだと、ブドウの話を入れることに反対の意見もあったが、この心をどうしてもわかってほしくて盛り込むよう指示した」という。そうした経緯で「いつも人から」という、細谷さんのコラムを転載した小冊子が作られ、グループ全社員に配布された。伊藤さんは「周囲の人の温かい励ましに支えられてきた。こんな心を持った店員さんのいることを知ってもらえればうれしい」と話している。
 

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2010年7月29日 (木)

和菓子のこと

 以前のブログでも紹介した内容ですが、和菓子のことから始めさせていただきたいと思います。

 

三重県伊賀地域には、歴史ある和菓子の店が多くて、それぞれの店の特徴ある品を買い歩きするのも楽しみなのですが、私が和菓子の店で最も感銘を受けたのは、滋賀県に本店がある「叶匠壽庵」です。滋賀県には、もうひとつ近江八幡の「たねや(クラブハリエ)」という著名な店もありますが、今回は「叶匠壽庵」を紹介いたします。

 

 「叶匠壽庵」の創業は1958年ということで、1600年創業の桔梗屋織居(伊賀市上野東町)のような超長寿店と比べればずいぶん新しいところですけれども、その「もてなしの心」は素晴らしいものがあると思います。

 

 そのことは、「叶匠壽庵」が大津市大石というところにつくった「寿長生の郷(すないのさと)」を訪れれば、実感できます。旧上野市街地からだと、車で阿山、信楽を経由して50分くらいです。そこでは、駐車場に車を置いたときから係の方が挨拶に来られて、いろいろな施設毎に丁寧にご説明をいただくというように、とても心配りが行き届いた感じがしました。料理は2種類あって、いずれもお茶席付きで懐石料理は6,300円、弁当は4,200円となっています。

 

 お茶席では、お抹茶をいただいた後、講話もあってお茶の心にふれたような満足感も得られます。優れた店や企業の場合は、宗教的とも言えるほど、精神的に高められた雰囲気があるようです。

 

 また、「叶匠壽庵」は各地のデパートに出店されていて、どの店へ行っても同じような気遣いがあります。特に、子どもに対して、和菓子やお茶のサービスがあって、こんな優しい店なら、ぜひ何か買おうと思わせるようなところです。

 

【叶匠壽庵 一壺天】

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 実は、「寿長生の郷(すないのさと)」へ行くまでは、高価な和菓子というイメージが強かったのですが、ここに貫かれている「もてなしの心」と顧客のために良い原材料を使おうという思想にふれれば、多少の価格の高さも理解することができました。

 

 そして、もうひとつ、「叶匠壽庵」をモデルとした次のビデオを見て、本当に顧客本位のすごい店なんだなと思いました。いくぶん脚色されていますが、これに近い実話があるそうです。

 

 そのビデオは「にんげんだもの(日本映像企画)」

            ※詩人の相田みつを氏とは無関係

 

というもので、社員研修用として平成元年に製作されたものです。このリンク先にあらすじが書かれています。

 

 著作権法上そのまま引用することはできないので、私なりにまとめてみると、「苦労して生活している主人公の若い女性店員の方が、お客さんのためには何をすればよいかを必死に考えて、自らの犠牲も顧みず、実行していく、しかも、それが権限もなく、見返りを期待していない中での自然な行動である」というところがこのビデオの眼目であると思います。

 

 「誰にも認められないかもしれなくても、行動してしまう、そして、店全体としてもその行動をバックアップしていく」、こうした一連のことが、視聴者の琴線にふれ、単に売ればよいというものでない奥深いものを訴えかけてきます。

 

 私の拙い文章では書き切れないので、観ていただくしかないのですが、私にとっては、感動する映画の第1位、涙を流したい方にはぴったりです。

 

 ホスピタリティの原点はこういうところにあるのだなと見るたびに考えさせられます。

 

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