孤愁の岸(杉本苑子さんの小説)
講談社発行の日本歴史文学館19で、世阿弥の生涯を描いた「華の碑文」とカップリングされているのが「孤愁(こしゅう)の岸」。感動的な作品です。
これは1754年(宝暦4年)から1755年(宝暦5年)にかけて、愛知・岐阜・三重の境にあたる木曽三川地域で行われた薩摩藩による治水事業を題材としたもので、総奉行を務めた平田靭負(ひらたゆきえ)以下の薩摩藩士の苛酷な運命と無念が詳らかに描かれています。
この治水事業は、外様であった薩摩藩の力を恐れた幕府が、40万両(今の金額にすると300億円ぐらいらしい)という莫大な費用のかかるとてつもない難工事を薩摩藩のみに押し付け、その力を削ぐことを目的としたものでした。
この薩摩藩士の方々のおかげで濃尾平野の治水が進みはしましたが、そのための犠牲は、51名が自害、33名が病死、さらには工事完了後に総奉行も切腹というように、あまりにも大きかったということです。
全く知らない土地の人々のために大変な苦労をした薩摩藩士の方々に対して、感謝の気持ちを忘れてはいけないなと思いました。
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