書籍「リストラなしの年輪経営」
この本を書かれたのは、長野県伊那市にある伊那食品工業の代表取締役会長の方で、企業を永続させるためにとても重要なことを多く示されています。何しろ伊那食品工業は、売上や利益の増加を追い求めないにもかかわらず、創業以来48年連続で増収、増益を実現した会社ですからね。
たとえば、
・経営にとって「本来あるべき姿」とは、「社員を幸せにするような会社をつくり、それを通じて社会に貢献する」こと。売上も利益も、それを実現する手段にすぎない。
・経営とは「遠きをはかる」こと。短期の利益を意識するあまり中長期的な取組みをおろそかにしてはならない。
・急成長は敵、目指すべきは「年輪経営」。「ブーム」は「最大の不幸」。
・「ケチは悪循環の始まり」。人件費や福利厚生費をケチると、社員のやる気が低下して、会社の活力が落ちる。
・過去を調査するマーケット・リサーチでは「いい商品」を生み出せない。「いい商品」とは、「これは人びとの役に立つな」「これは人びとを幸せにするな」と感じられるもの。
・人が幸せになる一番の方法は、大きな会社をつくることではない。お金を儲けることでもない。それは、人から感謝されることである。
・企業の価値を測る物差しは「社員の幸せ度」。
といった、いずれも大変重要なことが書かれています。
その中でも、私が特に着目したのは、この本のタイトルでもある「年輪経営」、企業は徐々に成長することが大事であって、ブームに乗じて売上や利益を大幅に上げるのは逆にピンチであるという指摘です。
ブームになって商品やサービスがたくさん売れるようになると、つい過大投資をしたり、粗悪な製品を提供したり、ブーム期に雇いすぎた従業員を整理したりということを通じて、破綻に向かわせるおそれがあるということです。
これは利潤を追い求める企業論理とは一線を画するものですが、とても大切なことと思いました。
三重県でも同様の心配なケースがあります。それは20年に一度行われる伊勢神宮式年遷宮を迎える観光地としての伊勢・鳥羽・志摩地域です。
次の遷宮は2013(平成25)年に行われ、まさしくこの年とその翌年のおかげ年はブームというのが相応しいたくさんの方がこの地を訪れます。これまでの遷宮のときにも通常年より突出した数の来訪者を迎えています。
その多くの来訪者に満足できるサービスを提供できればいいのですが、あまりにも多くの人が来るのでそうもいかず、あまり満足できなかった方はリピートしなくなることが想定されます。またそれでなくてもブームが去ると大幅に観光客が減るので、過剰投資の後始末や従業員の処遇に苦労するように思われます。
こうしたことが杞憂に終わるよう、集客して儲けることばかり考えず、「年輪経営」にならって来訪者と従業員の満足度を高めることを第一と考える取組みを進めてほしいものです。
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